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2022.02.07掲載

杏ファーム -アンファーム- 新宅 杏奈(しんたくあんな)さん

祖母・母・孫、親子3世代農業〈杏ファーム〉

きれいに耕された畑には、白菜やブロッコリーが育ち、その横では、春に収穫予定の人参の種が蒔かれていく。雑草が丁寧に抜かれた畑からは、その持ち主が毎日どれほど心を配っているかが伝わってくる。ここは、山に囲まれた三原市西野で祖母、母、娘の親子3世代が営む「杏ファーム」の畑だ。
西野は昔から、山から湧き出す豊富な水で育った、ほうれん草の産地として知られている。杏ファームも、ほうれん草はもちろんのこと、夏には枝豆をはじめとする夏野菜に加え、1年を通して様々な野菜を栽培している。

気付けば、ずっと傍にあった祖母の姿


「ばーちゃん、人参の種はどのくらいの間隔で蒔けばいいんかね?」。杏ファームを主催する新宅杏奈さんの声が畑に響く。杏奈さんの横には、同じ様に種を蒔こうと待ち構える母・直美さん。そしてそれに答えようと、急ぎ足で近寄る祖母・睦子さん。後には3人楽しげな会話と笑い声が聞こえてくる。杏ファームは、2021年2月から活動を開始。そもそも60年以上に渡り農業を営んできた祖母と共に野菜づくりをしたいと孫の杏奈さんが立ち上げたものだ。
きっかけは、体調を崩し仕事を休んでいた杏奈さんが、何気なく目にした畑で働く祖母の姿だった。生まれたときからずっと傍にあったはずなのに、意識して見るのは初めて。振り返ってみれば、どんな日でも朝から晩まで畑に出ていた祖母を「カッコいい」と感じた瞬間だった。「私もやってみたい!」自然にそう感じた。

祖母のこだわり、孫の挑戦


「最初は、育てる野菜の種類を増やしたり、作る方法を変えてみたりと、やりたいことがたくさんあったんです。」と杏奈さん。でも実際に始めてみると未経験のことばかり。ときには祖母と意見がぶつかることもあったが、母のアドバイスもあって、今はまず、祖母のやっていることを見て、聞いて吸収しようと切り替えた。
農業に関わって数ヶ月が過ぎた頃から加わった母も、始めのうちは、何かと意見が食い違う二人の仲介役だったが、近頃は、畑仕事に加え、自宅玄関で毎週金曜日に開く野菜直売所の切り盛りも担当している。

変わっていった祖母とのつながり、家族のかたち


杏ファームがスタートし、親子3世代で野菜を作り始めて、1年が経とうとしているが、この間もっとも変化したのは3人のつながりだと、杏奈さん、母・直美さんは感じている。それまで、敷地内の別棟に暮らしている祖母が届けてくれる野菜を食べることはあったが、作っている過程にまで思いを寄せることはあまりなかった。それが、杏奈さんが野菜づくりに関わるようになったことで、日々の暮らしを共有できる間柄になった。祖母もこれまで積み重ねてきた経験や、前の代から教わった知恵なども話してくれるようになった。
「家族なんだなと、改めて感じます。」杏奈さんの農業への一歩が、祖母・母・孫を改めて家族として繋いのだ。三世代で農業をやってよかったと、心からそう思っている。
「畑に出ると、風の音、太陽の暖かさ、朝の匂い、土の感触、新しく出た芽、やっと収穫できる野菜、毎日違ったものに出会えます。」そう話す杏奈さんがこれから目指すのは、収穫体験など、誰もが気軽に関わりを持つことができるような、オープンな農業。できるだけ多くの人に、愛情注いで育てた野菜を手に取ってほしいと願っている。
杏奈さんにとっては、まだまだこれからも経験を積み重ねる日々が続く。そんな杏ファームからは、今日も3世代の楽しげな会話が聞こえてくる。


杏ファーム
新宅杏奈(しんたくあんな)
広島県三原市西野4丁目10-18
TEL.080-6375-2584
mail:anfarm72@gmail.com
instagram:https://www.instagram.com/hooren72/